私には、ミルフィオーレへ来る以前の記憶が殆ど残っていない。
降りしきる雨の中私を拾ってくれた白蘭は今、私の髪を丁寧に櫛で梳いている
貴方に渡すのは、
「ねぇ、ちゃん」
「なぁに?」
「いつになったら王子様は、お姫様を迎えに来るんだろうね?」
「・・・王子、様?」
"王子様"とは、私が以前に一緒にいた人物を差しているらしいが、白蘭は意地悪をしてそれが誰なのか教えてくれない
何故かそれは私にとって、とてもとても大切なことだけど、知ってはいけないことだと思う
知ってしまったら今この日常が奪われるような感覚があるのだ。
私にとって今一番大切なのは、白蘭ただ一人。だから、私はその"王子様"が何処の誰なのか聞かない。
初めの頃"王子様"は白蘭だと思っていたけれど、聞いてみたら「んーん、僕は王子様じゃないよ?」と言われたので
"王子様"は白蘭ではない。
じゃぁ一体"王子様"って誰?
思い出そうと目を閉じて浮かぶのは私を呼ぶとても優しい声と、どす黒く渦巻く嫉妬の炎と絶望感
とても優しい声が耳に通るのに、何故こんなにも悲しくて仕方がないの?
もしかしたら、私は"王子様"に捨てられたのかもしれない
だからこんなにも心が寂しいの?真ん中にぽっかり穴が開いたみたいなの?
「白蘭は、私を捨てない?」
「え?」
「んん、何でもない。」
無意識のうちに声に出していた、白蘭はクスッと笑ったようで私が首だけ上へ向けると案の定白蘭は笑っていた
「捨てない」
「え?」
「僕のたった一人の大切なお姫様を、捨てるはずないでしょ?」
過去の出来事で心にぽっかり穴の開いた空虚と絶望、そして優しく愛しそうに私の名を紡ぐ声
でも、私には今この腕の温もりを手放せない。この先が闇に満ちていようとも―――――
私はこの人から離れられない、逃れられない
さようなら、名も知らぬ王子様・・・。
今日和、今日から貴方が私のたった一人の王子様だよ?白蘭
血のように
紅い
赤薔薇
(王子様、王子様。名も知らない王子様、貴方は私にとってどんな存在だったの?もう、聞くことはないけれど)
※補足※
ヒロインは、ボンゴレリング争奪戦後失踪。
骸←ヒロインと見せかけて、骸⇔ヒロインだったけど
後に白蘭⇔ヒロイン←骸