時間が経てば消える匂いだが、今回は派手に散らしすぎたのか血と硝煙の匂いが鼻に付く。
剣に付いた血を振り払い、仕事が終わりのんびり歩いていたらハートの兵士に囲まれる意外な人物がいた。我等がボス・オレンジ色ウサ耳・そしてエプロンドレスを身に纏う女の子がハートの兵士達に囲まれていた。


ああ、身の程知らずの不届き者か・・・と笑いがこみ上げる。剣を銃に変え、・・・構えた

1. 全ては、ここから始まった

目の前で戦うのは、ニヒルな笑顔でハートの兵士を殺していく女の子。
スコープの付いた狙撃銃を彼女は、長距離云々関係なしにその威力を振りかざしていく。
私より少し背が高く、一つに結い上げられた髪、私より少し大人びた顔立ちをしていたけれど1,2歳しか変わらないだろうと思う。華美とも言い難いが、質素とも言い難い彼女の服装は全体的にモノトーンで纏められていた。色があるとすれば、襟に付けられた紅いリボンとコートのボタンからボタンへ幾重にも付けられたチェーンだ。
最後のハートの兵士を片付け、遠慮なしに踏みながら彼女は私達の目の前に立ち問いかけた。



「ボス、何してるんですか?」

「見てわからないか?お嬢さんと出掛けている」

「・・・わかりました、深く突っ込みません。
 話は変わりますが、こちらの可愛らしいお連れ様をご紹介頂けるのですか?」

「あぁ、報告を受けていると思うが数時間帯前から屋敷に滞在することになったアリスだ。」

「初めまして、私はアリス=リデル」

「お会い出来て光栄です、私は=。帽子屋ファミリーで暗殺部隊の統括を勤めさせて頂いてます。」

「んで、うちのNo,3だ」

「す、すごい・・・」



苦笑いをしながらは「まぁ、一応・・・」と謙虚な姿勢だ。
この夢に入って嫌というほど経験したのは、外見が例え人畜無害の常識人に見えたとしても油断してはいけない。中身がとんでもないものかもしれないからだ。
そして、この帽子屋ファミリーで暗殺部隊を仕切っている人間だ一癖二癖では収まらず十癖くらいあってもおかしくないくらいだ。
ぼんやりとそんなことを思っていると、部下の人たちだろうか彼女の指示を聞き「お任せ下さい」とやる気の無い声で返事をするが、行動はとても早くいつの間にかいなくなっていた



「では、私は屋敷に「お前も同行しろ、

「はい、ボス」



ブラッドの一言でシルヴィアも同行することになった。




****




「え、も"役持ち"なの?」

「巷では、ハートのジャックって呼ばれております」

「ハートの、ジャック?」

「"ハートの悪党。"この職にいれば"悪党"なんて褒め言葉ですが」



クスクスと彼女は綺麗に笑いながら紅茶の入ったカップに口をつける。
あの後ブラッドたちと訪れたのは、彼が贔屓にしている紅茶専門店(喫茶も兼ねている)ちょうどティータイムの時間だったので店内は混雑していた。
「待つのがだるい・・・」とブラッドが一言いうと、すぐにエリオットが店内で銃を構え「うちのボスがいらしているの、全員消えなさい」とが絶対零度の笑みを向けると脱兎のごとく店内から客がいなくなった・・・。やはり、マフィアに属するくらいだから普通じゃなかった・・・!!
店員さんに平謝りしたいくらいだ・・・。



「そういえば、アリスはなんでこの世界に?」

「ペーター=ホワイトだ」

「・・・ホワイト・ラビット、ですか?」



一瞬にして彼女の空気が変わった。



「ホワイト・ラビットがペーターを指しているのなら、そうよ。
 彼に連れて来られたの(無理矢理)」

「そう・・・。奴が管理者の"余所者"・・・か

「まぁ、彼女が屋敷に滞在することは変わらない。何かあったら助けてやれ」

「おう!」

「・・・怪我を負わない程度には」



小声で言ったボスやエリオットには聞こえたようだが、彼女には都合よく聞こえなかったようだ。嗚呼、とても残念だ。こんなに退屈せずにすむ変化があるのに、あのホワイト・ラビットのせいでどうでも良くなってしまうんだから。この世界の住人には無条件で愛される"余所者"なのに、私は彼女のことを好きになれそうにない。嫌いにもなれそうにないけれど。



(ボスの命令どおりしか貴女を助けない私を許してね?)